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話題の模倣の殺意を読んで ※ネタばれ&作品検証は記事下のみ

Posted by Frederica Choborine on 15.2013 ミステリー 0 comments 1 trackback
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模倣の殺意 (創元推理文庫)
中町 信 (著)
 ※電子書籍版あり





事件提示部の終わりが9月15日なので、せっかくだから今日アップしたいと計画して投稿してみた。

本書の概要



七月七日の午後七時、坂井正夫は自殺した。
世をはかなんでの自殺とされたものの、その死に疑問を持った編集者の中田秋子、ルポライターの津久見伸助はそれぞれ独自に調査を開始する。


この作品は発行の変遷とともに、それぞれかなりの修正が加えられてきた作品らしい。
この点は解説が詳しい。
解説はとても読みやすいので是非読んでほしい。
この作品の修正点は多いなるネタばれなので深く言及しないが、作品を読み終わった後にどうぞ。
「ここから先はネタばれです」という注意書きがあるので、そこまでなら先に読んでも構わない。
確かにこれはまずいだろうという、大きなヒントが提示されていて、作品の視点からして違ってしまうものだったなと思える変更点ばかりだった。
本書を持ってそういった大きな伏線は排除され今の形となっている。


本書の感想~解説に問題が?



この本は日経の書評欄で、古い作品であるが、著者は2009年に亡くなったのだけれども、着実に読者数を伸ばしている話題作として紹介されていたので興味を持った。
これではずれを引いてしまったことの方が多い位だが、今回は当たり作だった。
本書は著者のデビュー作だが、ミステリーとして随分計算された作品だと感じた。
本書の終盤でこれは当時昭和48年ごろの話だと言うことがわかるのだが、そんな古さは確かに感じない。
それだけ描写に工夫が少ないとも言えるのだが、シンプルで読みやすい。
古い本にありがちな難しい言い回しもわずかだ。

私はなかなか楽しめたが、一点気になった所がある。
つじつまを合わせるためには、熟読が必要と感じられるためだ。

P228からエラリークイーンのような読者への挑戦状をはさんで、解決編が始まる。

だがここでもハッキリとした解決の提示はなかなかされない。
ヒントが増えてきた、という印象で始まる。

それ自体は問題ないが、ヒントがかなり細かい。
そして最後まで読破しても、かなり細部に注目していないと、真実を理解することは極めて困難ではないかと思われる。
勿論本書は軽い気持ちで読んでいった人にも大筋は理解できるだろう。
しかしそれだけでは合点のいかない所も多々出てくるのではないだろうか。
その点ある意味読み込みを必要とする作品は、娯楽小説として不完全な印象を受けた。
私は伏線を拾うために再読する程度の良さは感じたが、流し読みでは疑問点が残るかも?


後半では作品を細部まで解説する。
年表など資料も少々作成してみた。
明確にこれは~というトリックの作品ということなどは書かないが、(検索でネタばれしないためというのもある)
完全ネタばれのなぞ解き解説となっているので、未読の方は注意して頂きたい。
ハッキリ言ってこちらの方に力が入っているので、読み終わったら後半も見に来てほしい。


文庫: 327ページ
出版社: 東京創元社 (2004/8/13)
ISBN-10: 4488449018
ISBN-13: 978-4488449018
商品パッケージの寸法: 14.8 x 10.6 x 1.8 cm

Amazon:模倣の殺意 (創元推理文庫)
楽天ブックス:模倣の殺意 [ 中町信 ]


「彼女は存在しない」で好評だったので、今回もやってみた。
これより作品の伏線などを解説してみる。

※以下ネタばれ注意!


なにかが狂っている――と、秋子は思った(p188)



ここが物語のクライマックスだろう。
タイムトラップの考慮は多くの人がしたかもしれない。
加えて私も例えば1と3章の間にも隔たりがあるという可能性も考慮した。

人物描写については今回はスルーしている。
解説で言われていたのだが、多少印象は違えど、人には色々な一面が…で済むと言えないこともないと、再読して書きだした上でも思ってしまった。


伏線を理解する


■死亡記事の掲載
  第2章P41で夕刊の記事への言及がある。一方でおそらく初出のP64では「ない」と言っている。
  ちなみにこのことは解決編のP270でも念押しされた。

■「6月下旬」に対する金子の疑問
  これは多くの人が注目する点であろう。ここから予測されるのは時期に対する齟齬があるのではという考えだ。
  とはいえこの段階ではあまり決定的な手掛かりとは言えない。
  「今年の」と付け加えなかったのは、著者の意図的なものだろうなと私は思っている。

■秋子くるな旅館にて
私としては一番のクライマックスと考えられるのが、ここの章である。
さきほどのセリフが全てを物語っている。

・推理世界を見比べてみると…
  秋子が手にしたのは8月号。新人賞、聞いてない…。新しいというので今年のものだろう、普通去年の物など置かないし。このことは解決編P247で「今年の」と確定された。
  一方で盗作が指摘されたのが9月号、受賞後第2作…?これは早期の時点で(P73)津久見が手に取っている。

・「――」
  地名の話題を受けて。住所については秋子は一切言及していなかったと思うがどうだろうか?
  住所について明らかに異質なものを感じている。

解決編を理解する



主な解決編の流れ

時間のトリックのヒントが増え始める

P254「去年の6月」と、津久見と秋子の隔たりを明記

P264「去年の7月」に死んだと言われる。
   今年の7月まで生きていた人間が死んでいる?

なぜわかりにくいかというと、捜査をするのは二人であるが、秋子は解説をあまりしないためではないかと思う。
事件は結局のところ探偵は津久見一人という感じになるだろう。


ここからは解決編も交えて。
詳細を理解するためのいくつかのポイントを解説。

・瀬川が作品を発表したのはいつなのか
  柳沢はP229で2年前だと言う。P248で秋子は去年発売になったと言っている。
  このことから、正夫の死の前年と考えられる。同じ年の夏に瀬川も死亡。

・ノートの行方は
  簡単な図を制作してみた。
  「去年」「今年」と時系列がややこしくなるので、秋子が正夫の自殺を知った、物語開始の日時を2010年と仮定して制作した。物語がいつのものかは最終章にならないと明かされないため、単なる身近できりのよい日時にしただけである。
作者が亡くなったのも2009年であるし。
※下記の年表も同じ。

模倣の殺意 ノートの行方

・今日は何曜日?
  月曜日にあるという会議に参加していることにより、秋子編9月11日は月曜日と確定した(昭和47年9月11日(月))。
  そこから計算できることであるが、最後の「9月15日の祝日から日曜日にかけての飛び石連休」から、15日は金曜日であることがわかる。
  土日は休みだよね、という世代の私にとってはどこを飛ぶのだと一瞬思ってしまったので、念のため計算した。
  ハッピーマンデーなどもあってややこしい今の時代である。
  ところで、津久見はこの敬老の日を土日の二日続きの連休と言っている。15日は土曜日だ。

・新人賞を受賞したのはいつか
  プロローグP15の時点で、「去年の6月」とある。
  秋子は9月9日に真新しい雑誌から受賞作を目にした。自殺の同年と考えていいだろう。

・話の時系列がよくわからない
  年表を作ってみた。

模倣の殺意 年表

間違いがあったら申し訳ないです。

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模倣の殺意 (創元推理文庫)中町 信 東京創元社 2004-08-13by G-Tools   (以下、完全にネタバレです。注意!!)  

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Frederica Choborine

Author:Frederica Choborine
ミレニアル世代のいちピアノ愛好家。
音楽書以外で本は週に1~3冊位。
書評という域には達していませんが、本の感想を書こうという割に、本は大好きというわけではない(笑)
人生を豊かにするため、などのために様々なジャンルを読んでいこうと思っています。
本は結構読むほうですが、本好きではないということで読みやすさも重視。
レビューは未読者の楽しみを奪わないようネタばれ配慮、既読の方用に時々小ネタを入れています。

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